《名利の塵》
| 絵画の仕事
邦坊はドラマチックに紆余曲折の人生を歩んだ人物です。長い下積み時代を経験し30代でチャンスを掴み東京日日新聞の記者として就職。その後、売れっ子の作家となり地位も名誉もお金も手にすることができました。しかし、過労による心身の喪失と戦争を理由に東京を離れます。邦坊は、華やかな仕事のなかで得たものよりも失ったものの方が大きかったと悟り、帰郷後は隠居を兼ねて静かな生活を望んでいました。実際は、沸々と楽しいことへの欲が止まらなくなるのですが、目指した先は憧れの禅僧・良寛の生き方でした。作品は良寛の漢詩の一節「誰問迷悟跡 何知名利塵」とともに田舎で農作業をする仲睦まじい夫婦の姿を描いています。のんびりした暮しに憧れていた邦坊の願いと重なるような穏やかで優しい世界が広がっています。
