ブログ

  1. ホーム
  2. ブログ
  3. 収蔵作品・資料リスト
  4. 《遍路絵巻》昭和13年

《遍路絵巻》昭和13年

琴平と戦争


邦坊は、東京日日新聞(現毎日新聞)を退職し、病気療養のため琴平に戻ってきました。金刀比羅宮の近くに住み、戦争から隠れるように齢39歳にして隠居生活を始めます。遍路絵巻は、邦坊の新生活が始まった頃にスケッチした琴平の風景です。当館の初代館長・位野木峯夫の協力を受けて作品の断片をまとめて絵巻物にしています。


多忙な仕事から解き放たれ、故郷で心穏やかに過ごせる日々。リラックスした様子は、細く柔らかい描線からも想像することができます。絵巻では金刀比羅宮に参拝するお遍路たちの姿を描いています。開戦直後ということで戦勝祈願をする人々で賑わっていた時代です。不安や希望など様々な願いが錯綜しているはずですが、女性の遍路姿をみると意外とおしゃれな服装も多く風俗史の観点からも興味深い作品です。このように、讃岐の画家としての人生は身近にある故郷の風景を描くことから始まりました。疲れた心と体をリハビリをするように、何気ない日々を愛おしくスケッチした邦坊。故郷の日常を優しく見守る姿を想像することができます。



邦坊が書いた箱書き