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和田誠『似顔絵物語』


和田誠、和田邦坊を語る

去年、他界した和田誠の本を入手しました。和田誠さんといえば雑誌の表紙でもおなじみのイラストレーターで、星新一の小説、三谷幸喜のエッセイ本の装丁なども手掛けています。料理研究家の平野レミさんのご主人であり、女優の上野樹里さんの義理の父親にもあたる有名人。エッセイストとしても活躍しており、著作も数多く残しています。その1冊『似顔絵物語』を読むと、和田邦坊のことが綴られていました。

本の中では、似顔絵史の名人として邦坊を紹介しています。「ぼくと苗字は同じですけど、うちの累系ではありません」と前置きしたうえで、邦坊の著作『漫画探訪』についての感想を続けています。(和田誠と和田邦坊には面識はありません、ただただ読者として邦坊作品を古本で持っていたそうです)

邦坊の発想が面白い!

和田誠の講評としては、似顔絵のクオリティーよりもインタビューの質問内容や記事の作り方が面白いと絶賛しています。邦坊はただ単にインタビュー相手の似顔絵を描くだけでなく、自分も相手と同じ体験をすることで、読者に面白さや大変さを伝えるという方法をとっていました。(例えば、時代劇の俳優にインタビューをするときは、自分も殺陣を覚えてワンシーンを演じる。陸上選手を取材するときは、徒競走の勝負を申し込む。などなど)紙面になると、1コマ程度になる挿絵で、ある意味とても無駄に手が込んでいるような演出ですが、それがまた読者をひきつける邦坊の必殺技だったようです。ともあれ、私も大好きな和田誠と和田邦坊が繋がったことは、面白い発見でした。いい作品を残すということは、時代が変わっても語り継がれるものなのだなあと、感心しました。

書籍情報

和田誠『似顔絵物語』白水社、1998
少し古い本になるため新刊はあまり販売していないようですが、県の図書館には配架しています。和田邦坊と同時代の漫画家(岡本一平)についても紹介しています。エッセイになるのでとても読みやすい1冊です。

香川県立図書館>和田誠『似顔絵物語』https://www.library.pref.kagawa.lg.jp/winj/opac/switch-detail.do;jsessionid=29EE271119E3F88E0B9951E54FF4E347?idx=1