国勢調査はお済ですか?
| 学芸室より
新聞漫画家として一世風靡した和田邦坊。代表作の《成金栄華時代》ばかりが注目されていますが、邦坊の作品はそれだけではありません。例えば《成金栄華時代》が収録されている『現代漫画大観』第3編(漫画明治大正史)をみてみましょう。(※1)
『現代漫画大観』第3編(漫画明治大正史)
邦坊の作品は「奠都五十年祝賀」P244、「欧州戦争の大団円」P245、「平和祝賀会」P246、「板垣退助薨去」P247、「講和大使の帰朝」P248、「郵便飛行最初の試み」P250、「尼港事件起る」P251、「我が国最初の労働斎」P252、「国勢調査施行」P253、「日本社会主義同盟生る」P254の合計10点を掲載しています。大正8~9年にかけての歴史的事件を担当しており、代表作《成金栄華時代》は口絵のカラーで登場しています。
第1回国勢調査を描く!
ただいま令和2年(2020)国勢調査を実施中。皆さんはもう提出しましたか?実は、今回の国勢調査は記念すべき第21回目(100周年)の年になります。歴史を遡って、第1回目の国勢調査は1920年(大正9年)10月1日に実施されており、邦坊はその当時の様子を「国勢調査施行」というタイトルで漫画を描いています。漫画といっても、いまの漫画のようなコマ割りではなく1ページに絵と文章を入れた作品になりますが、泥棒中の犯罪者までに国勢調査をしているというドタバタ劇をコミカルに描いています。
初めての国勢調査は「国勢調査は文明国の鏡」「一家の為は一国の為になる」というスローガンから「一人の嘘は万人の実を殺す」「申告は一に正直二に正確」という国家プロジェクトで行われました。邦坊が描いた漫画のような事件があったとは思えませんが、調査員もきっとオロオロしながら各家庭を訪問したことでしょう。ちなみに、毎回10月に調査する理由は「冬は積雪が深く」「夏季は炎暑が激しく」「春は旅行、遊山する者が多く」だそうです。国勢調査のHPをみると歴史も概要も分かりやすく紹介してくれているのでおすすめです!
国勢調査2020 https://www.stat.go.jp/data/kokusei/2020/ayumi/
(※1)『現代漫画大観』は、昭和3年(1928)に中央美術社から出版された日本初の漫画全集(全10巻)です。各巻の内容は、現代世相漫画、文芸名作漫画、漫画明治大正史、子供漫画、滑稽文学漫画、東西漫画集、日本巡り、職業づくし、女の世界、近代日本漫画集というテーマで収録されています。全巻すべて当時の漫画家たちの描き下ろしだけでなく、古典や海外作家の風刺漫画も掲載しています。難解な古典文学を面白く漫画化した企画、現代社会の問題や事件について漫画を使って解説するなど、幅広い世代から支持を集めた全集でした。予約受付から話題を集めていたので、当初は全6巻の予定でしたが急遽全10巻に変更するほど人気があったといいます。そのなかで邦坊の作品は、第1編(現代世相漫画)と第3編(漫画明治大正史)に収録されています。