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魅惑の画帳を見つけました

邦坊が遺したスケッチブックは、美術館に20冊以上ありますが、いろいろ片づけをしているとひょんなところからメモ帳や画帳を発見することがあります。今日もふと見つけてしまった画帳が面白くて時間が経つのを忘れてしまいました。


画帳は、大判サイズのスケッチブックになります。1ページずつ検証はできていないのですが、画題をみると(東京時代を経て帰郷した)昭和16年頃に描いた作品と分かります。画題は身近な人(美人!)や動物、植物などなど。初期の作品は、線が細く色数も少ないという特徴があります。


カエルのスケッチは数ページにわたります。面白いことに、ページをめくるたびにカエルたちの表情が豊かになり戯画的に変化していきます。そして、儚げな女性の姿もスケッチで描いています。邦坊は、時事漫画ではたくさんの似顔絵を描いていますが、絵画作品として人物画を描くことはほとんどありませんでした。スケッチの写生は、あくまで基礎練習のひとつだったのかもしれませんが、邦坊の人物画は意外に魅力的で優しい眼差しを感じます。

年代からいうと、戦前になるので決して安穏な時代ではありませんでした。しかし、激務だった東京を離れて、ようやく手に入れた時間を楽しむ様子を想像することができます。また、季節を追うように画題にも四季折々の風景が広がり、画家として心穏やかに暮らしていたことが分かります。