秋の夜ばなし/冬来たりなば
| 企画展
企画展
和田邦坊画業館コレクション展vol.3
Long Autumnal Night After winter comes spring
秋の夜ばなし/冬来たりなば
第1部 2020年10月17日(土)~2021年1月11日(月)
第2部 2021年2月4日(木)~4月8日(木)
開館時間 9:00~17:00(入館は16:30まで)
感染症の拡⼤防⽌のため、展覧会の中止または変更の可能性がございます。
休館日 火曜日・水曜日
年末年始 2020年12月30日(水)31日(木)、2021年1月1日(金)
※展示替え期間 2021年1月14日(木)~1月31日(日)
入館料 一般500円、65歳以上の方・身体障害者手帳等をお持ちの方は300円 、小中高大生・無料
第1部<展示作品>
和田邦坊旧蔵品の新聞漫画資料や写真
邦坊が描いた大津絵(絵画)、絵付けした陶芸作品(砥部焼)
香川県の物産品を彩ったパッケージデザイン資料
木版画家・棟方志功からの書簡、木版画作品など
第2部<展示作品>
和田邦坊旧蔵品の新聞漫画資料や写真
季節を描いた色紙絵、軸絵、額装絵画
邦坊が手掛けた民芸品、工芸品
香川県の物産品を彩ったパッケージデザイン資料 など
前回の「春かすみ/夏の夜風」に引き続き「秋の夜ばなし/冬来たりなば」は、邦坊が発表した随筆の章題から名付けました。「冬きたりなば 春遠からじ」は、辛いときを耐え抜けば必ず幸せが訪れるという西洋の諺になります。2020-2021年は、私たちにとって試練の年となりました。春はもう少しです!
KYUMAN MUSEUM OF ART
和田邦坊画業館 灸まん美術館
〒765-0052 香川県善通寺市大麻町338
TEL&FAX 0877-75-3000
第1部 展示作品
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秋の夜ばなし/冬来たりなば
第1部 2020年10月17日(土)~2021年1月11日(月)
番号 作品名・資料名 分類 点数 年代
1 成金栄華時代 書籍 1 点 昭和3年(1928)
2 ウチの女房にゃ髭がある 書籍 1 点 昭和11年(1936)
3 長寿手帳 冊子 1 点 昭和47年(1972)
4 一平全集 和田邦坊旧蔵品・書籍 1 点 昭和5年(1930)
5 邦坊の作品が掲載された雑誌・書籍 書籍 1 点 昭和初期
6 タヌキ踊り 一閑張 1 点 昭和40年代
7 園部秀雄(1870-1963) 和田邦坊旧蔵品・写真 1 点 昭和初期
8 ピストン堀口(1914-1950) 和田邦坊旧蔵品・写真 1 点 昭和初期
9 双葉山(1912- 1968) 和田邦坊旧蔵品・写真 1 点 昭和初期
10 ゐざりの花見 和田邦坊旧蔵品・写真 1 点 昭和初期
11 堤真佐子(1917-1976) 和田邦坊旧蔵品・写真 1 点 昭和初期
12 長谷川一夫(1908-1984) 和田邦坊旧蔵品・写真 1 点 昭和初期
13 高杉早苗(1918-1995) 和田邦坊旧蔵品・写真 1 点 昭和初期
初公開 14 邦坊ほがらか問答 和田邦坊旧蔵品・雑誌切り抜き 1 点 昭和初期
15 漫画探訪 書籍 1 点 昭和4年(1929)
初公開 16 この人の魅力 和田邦坊旧蔵品・雑誌切り抜き 1 点 昭和初期
初公開 17 名士の実演余興くらべ 和田邦坊旧蔵品・雑誌切り抜き 1 点 昭和初期
18 東京時代の邦坊 写真 3 点 昭和初期
19 キング5月号 雑誌 1 点 昭和10年(1935)
初公開 20 世渡り漫画問答 和田邦坊旧蔵品・雑誌切り抜き 1 点 昭和初期
21 文房具 和田邦坊旧蔵品 1 点
22 棟方志功《いつきしまひめ》 和田邦坊旧蔵品・木版画 1 点 昭和40年(1965)
23 棟方志功からの書簡 和田邦坊旧蔵品・葉書 1 点 "昭和40年(1965) "
24 棟方志功からの書簡 和田邦坊旧蔵品・葉書 1 点 昭和40年(1965)11月16日
25 棟方志功からの書簡 和田邦坊旧蔵品・葉書 1 点 昭和44年(1969)
26 文化勲章受章記念/棟方志功展図録 和田邦坊旧蔵品・図録 1 点 昭和46年(1971)
27 湊川神社壁画奉納記念/棟方志功展図録 和田邦坊旧蔵品・図録 1 点 昭和48年(1973)
28 金比羅ちょうさの図 額装絵画 1 点 ―
29 仁王門 額装絵画 1 点 ―
30 冬耕 額装絵画 1 点 ―
31 牛飼い 額装絵画 1 点 ―
32 鐘馗(しょうき) 軸絵 1 点 ―
33 鐘馗と鬼 軸絵 1 点 ―
34 いろは猿 軸絵 1 点 ―
35 滝 軸絵 1 点 ―
36 猿王国 軸絵 1 点 ―
37 冬耕 軸絵 1 点 ―
38 金山寺山初冬 軸絵 1 点 ―
39 落款 印章 8 点 ―
40 一空庵にて 写真 2 点 ―
41 赤不動 絵馬額 1 点 ―
初公開 42 青面金剛 額装絵画 1 点 ―
43 大津絵/鬼の三味線 額装絵画 1 点 ―
44 大津絵/藤娘 額装絵画 1 点 ―
45 大津絵/長刀弁慶(なぎなたべんけい) 額装絵画 1 点 ―
46 大津絵/釣鐘弁慶 木板絵画 1 点 ―
47 大津絵/お多福 木板絵画 1 点 ―
48 大津絵/恵比寿 木板絵画 1 点 ―
49 犬 和田邦坊旧蔵品・砥部焼 1 点 ―
50 松 砥部焼 1 点 ―
51 君不老如花 陶磁器 1 点 昭和47年(1972)
52 田舎家 砥部焼 1 点 ―
53 群犬 砥部焼 1 点 ―
54 色紙絵・山 色紙絵 1 点 昭和47年(1972)
初公開 55 色紙絵・馬 和田邦坊旧蔵品・色紙絵 1 点 ―
56 色紙絵・秋草 色紙絵 1 点 ―
初公開 57 色紙絵・十二月 色紙絵 1 点 ―
58 色紙絵・万象之中独露身 色紙絵 1 点 ―
初公開 59 色紙絵・牧童 色紙絵 1 点 昭和36年(1961)
60 色紙絵・寝牛 色紙絵 1 点 ―
61 銀杏と寺 額装絵画 1 点 ―
62 里の庵 額装絵画 1 点 ―
63 山寺 額装絵画 1 点 ―
64 秋光 額装絵画 1 点 ―
65 六地蔵A 額装絵画 1 点 ―
66 灸まん関係のパッケージ原画・資料一括 1点 昭和30~50年代
作品紹介
邦坊流の取材は体当たり!
邦坊が手掛けた記事は、世相を風刺した時事漫画。政治家たちを描いた似顔絵、議会漫画。野球や相撲の結果をまとめたスポーツ漫画。漫画らしい挿絵もあれば、8コマという不思議なコマ割りの漫画などもあります。そのなかで邦坊の十八番は、体当たりで取材した問答シリーズです。例えば、プロボクサーの取材では、自らもリングにあがり果敢にも格闘技に挑戦しています。女子陸上選手の場合は、徒競走の勝負に挑みながら紳士的な文章でルポルタージュを仕上げています。時代劇の俳優と会うときは、衣装を身にまとい役者相手に殺陣(たて)の指導を受けるなど、ただ単に座ってインタビューするのではなく実践型の取材を心得ていました。このように、誰もが憧れるスターとの共演は、読者にとって羨ましい夢のような体験ばかりだったといえるでしょう。実際、邦坊も楽しみながら取材をしていたようですが、いつもどんな体験をすると読者に共感してもらえるだろうか、どんな話題を提供するとスターたちの素顔を捉えることができるだろうかなど戦略を練っていたようです。
読者は大人から子供まで
邦坊は、大正15年(1926)東京日日新聞(現毎日新聞)の時事漫画家として就職しましたが、発表した作品は、所属先の新聞紙面だけではありません。漫画だけでなく文章も面白いといわれ小説家デビューし、漫画と文章を武器に数多くの雑誌に連載をもつようになりました。例えば、文豪たちが連載していた『文芸春秋』『講談倶楽部』。子供向け雑誌の『少年倶楽部』『少女倶楽部』。経済雑誌の『実業の日本』。女性雑誌の『主婦の友』『婦女界』等々。雑誌名をみるだけで、男女問わず大人から子供までをターゲットにした作品をそれぞれの雑誌に合わせてリリースしていたことが分かります。また、男性よりも女性ファンの方が多かったようで、毎月たくさんのファンレターも届いていたといいます。いまの漫画家と違って、当時は作家自身も紙面に登場することが多くありました。邦坊も企画モノがあるたびに売れっ子作家(文士)として余興や対談に顔出しをしており、タレントのような活動もしていました。
ユーモアを忘れずに描く
邦坊が描く絵画は、松竹梅のような定番の画題も多くありますが、少し変り種の作品もあります。例えば《鐘馗と鬼》をご紹介しましょう。鐘馗(しょうき)といえば、疫病から家を守ってくれる魔除けの神様として有名ですが、絵画の世界では邪悪な小鬼を退治する勇敢な武将として描かれています。しかし、邦坊が描いた鐘馗は、戦うどころかゴロンと転がって昼寝をしており、あろうことか敵である小鬼が心配そうに横から覗き込んでいます。気持ちよさそうに寝ているし困ったなぁ…という複雑な気持ちとともに「もう出番だから起きて!起きて!」と揺り起こしているコミカルな動作が楽しい作品です。このように、伝統的な絵画の画題も邦坊の手にかかると遊び心満載の作品に大変身してしまいます。また、個性豊かな登場人物たちは、時事漫画家時代に培った表現力が活かされており、邦坊が得意とするユーモアといえます。