邦坊が描く大津絵
邦坊が描く大津絵
大津絵とは、滋賀県大津の土産物として売られていた木版画です。浮世絵のように手軽に買うことができ、旅の思い出として見て楽しむだけでなく護符としても人気でした。大津絵の歴史は、江戸時代からで画題も形態も用途も様々ですが、鬼や鳥獣、誰もが知る歴史上人物、歌舞伎に登場するキャラクター、ご利益のある神仏などがよく描かれています。最近では、素朴絵ともいわれていますが、セリフのないゆるい漫画絵のような存在です。娯楽的要素が強かった大津絵ですが、昭和初期に「民芸」を提唱した柳宗悦に見いだされ「民画」と呼ばれるようになります。そして、国内の評価だけでなく海外からも脚光を浴びるようになりました。また、美術史的に粗末な扱いを受けていた大津絵ですが、数多くの画家たち(円山応挙、伊藤若冲、富岡鉄斎、浅井忠…等々)によって様々な大津絵が描かれています。画家にとって、大津絵は松竹梅のような定番の画題とは違った魅力があったようで、それぞれ個性溢れる新しい大津絵の表現が生まれました。
讃岐の画家・和田邦坊も大津絵に挑戦しています。展示している作品には「大津絵写之」とあり、模写していたことが分かります。また、邦坊は大津絵と讃岐の風物詩(遍路、弘法大師)を組み合わせて描くことが多くあります。香川の風景に溶け合うような素朴さと風合いが気に入っていたのかもしれません。
ベニヤ板の作品は、東京にある蕎麦店「つづらそバ」の天井絵の試作品と考えられます。華鬘(ハートのような形)のフレームも邦坊が絵画制作でよく使った形です。天井絵は全部で12枚あり、大津絵とともに讃岐の画題も取り入れて描いています。
関連情報
ただいま東京のステーションギャラリーで大津絵展が開催されています。
邦坊が写した大津絵も展示されているかもしれませんね!
もうひとつの江戸絵画 大津絵
2020年9月19日(土)-11月8日(日)東京ステーションギャラリー
http://www.ejrcf.or.jp/gallery/exhibition/202008_otsue.html