資料の副産物・・・
| 学芸室より
これまでの経験を踏まえると、資料の整理には必ず副産物が含まれています。
例えば、資料を包んでいた新聞紙・包装紙。
当時の世相が分かる資料としてついつい手を止めてしまうことが多々あります。
新聞だと年代が分かるので、資料の出自の助けとなりますし、
包装紙は同時代を映す重要な資料となりうることがあります。
↑画材道具を調査しているときに見つけた包装紙。いまのアリナミンの広告と違って可愛いデザインですね。
画材の顔料を包んでいたものですが、ここからも世相が見えてきます。
日本の製薬会社が海外輸出に力を入れていたのだなあとか。。。
あとデザインの流行とかも気になりますね。
先日、香川県の広報誌を整理しました。和田邦坊の表紙だったので、目次だけ確認しようかなと思っていましたが、
ふと次のような感染症対策の記事をみつけました。
赤痢対策に的をはずすな
昨今赤痢は全国的に恐しい勢いで蔓延しており、
香川県下でも今日一三〇名を突破し、病勢減退の兆しは少しも見えないのである。
『月刊香川』8月号(第2巻第8号)香川県広報課/昭和25年
いまでこそ毎日、新型ウイルスのニュースばかりですが、つい70年前の香川県でも深刻な感染症が蔓延していたようです。まだまだ衛生面の管理が行き届かなかった時代、県をあげて様々な対策を講じている記事が綴られています。他の文献まで確認できていませんが、小さな香川県でさえ感染症と戦ってきたという歴史をこのタイミングで知りました。美術館に勤めていますが、このように地域の歴史や文化に繋がる発見は和田邦坊研究ならではの大切な副産物のように思いました。