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《襖絵・山水図》

和田邦坊《襖絵・山水図》 昭和30~40年代

襖絵の賛は「白雲盡處是青山、行人更在青山外」とあります。「はくうんつきるところこれせいざん こうじんさらにせいざんのそとにあり」と読み、白雲が尽きるところに青い山があり、さらにその向こうをみると歩く人の姿がある、という直訳ができます。山水図は、中国で生まれた絵画のひとつで、現実の景色を写実的に描くこともありますが、架空の世界を再構築して表現することがほとんどです。この襖絵も賛の言葉の通り、中国を思わせる山水画が描かれています。 「青山」は、青くそびえ立つ雄大な山で、その姿は「動かざる存在」といえます。また「白雲」は、風に流されながら様々に形を変える「自由」の象徴として捉えることができます。それと比較して「行人」なる人は、どうでしょうか。山や雲には敵わないかもしれませんが、どこまでも歩き続け、その先へ進み続ける存在といえるかもしれません。前向きに進んでいこうと背中を押してくれる、そんな気持ちが生まれる賛と画になります。邦坊は「わしのいうことは絶対!」と自信たっぷりの発言が多かった人物ですが、実はとても繊細な性格で、いつも不安を周囲に吐露していたそうです。そのため、絵を描くときは自らを鼓舞するように前向きな画題や賛を選んでいたのでしょう。