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《椿襖絵》 

和田邦坊《椿襖絵》 

邦坊が描く絵画には、中村草田男、種田山頭火、正岡子規、松尾芭蕉、小林一茶などの俳人・歌人たちの作品が賛(絵の余白に書かれた文字のこと)として登場しています。邦坊も辞書や全集を読みながら句作に励んでいましたが、あまり自分の句を採用していません。しかし、椿を描くときだけは自作の「慾去りし 我と思えど陽だまりの 椿の紅に心動けり」を繰り返し使っています。邦坊は、健康と引き換えにして東京時代の成功を得たと考えており「世の中は名誉でもなく金でもない、精神的な安定が一番大切である」「一切は空である(すべての欲がなくなった)」と何度もインタビューで語っていますが、句のなかでは椿をみると心が動かされ欲がでてしまったと歌っています。画家として「この花を描きたい」という画欲が生まれたということでしょうか。椿の紅は、無欲の境地に立っていた画家の心も動かした美しさでした。