喝破!!!!!
| 作品・資料紹介
初公開作品 和田邦坊《喝破》昭和49年、公益財団法人喝破道場所蔵
今回のイチオシ作品は、公益財団法人喝破道場から借用した《喝破》です。こちらは、二枚一組の作品になります。ベニヤ板に直接描いており、絵の上から網をかぶせています。施設の玄関に対で設置されており、壁に板をはめ込んで展示していました。48年前に描かれた邦坊の大作です。
五色台にある公益財団法人喝破道場の設立を記念して描き下ろした作品。邦坊は、道場設立に奔走していた野田大燈氏の活動に賛同し、施設名を考えるなどの協力をしています。「喝破」とは、カッパと読み、心理を明らかにするという禅語になります。
施設の入口にそれぞれ左右に分かれて設置されていました。廊下をはさんで右に「喝」、左に「破」がありました。日にあたらない暗い場所にあったので作品の状態は良かったのですが、妖怪の河童らしい雰囲気が漂う…。
右側の「喝」には、白髪で眉毛も白くなった老師のような河童を描いています。杖で体を支え、隣の河童に向けて何か差し出しています。左側の「破」には、胡瓜を抱えた若い河童が目を閉じて直立不動で立っています。野田和尚によると年長の河童が若い河童に対して説法している絵だといいます。確かに老師の河童をみると、大きな眼でしっかりと前を見据え、若い河童に「欲を出し過ぎるな!」と一喝する姿に見えます。一方、若い河童は大好きな胡瓜をギュッと胸に押し付けたまま、神妙に話を聞いているようです。
今まさに真実を見極めたい…喝破!!
実は、喝破道場という施設名も邦坊が命名しています。邦坊は、禅語の「喝破」から妖怪の「河童」を連想させて、道場のために様々な河童の絵を描き下ろしています。河童に喝破させるところが邦坊らしいですね。緩いダジャレを楽しむように河童たちを愛でていただければ幸いです。また「真実を見極める」という喝破の意味も見る人の心に響けば何よりです。こんな時だからこそ美術を楽しみ、そして過去に学びたいと思う今日この頃です。
お説教されていても胡瓜を離さない…
食いしん坊な河童の気持ちにも寄り添いたい今日この頃。
関連サイト
公益財団法人喝破道場
https://www.kappa.or.jp/
和田邦坊画業館コレクション展vol.4
讃岐の画家、和田邦坊 第1部 2021年5月1日(土)~7月25日(日)
https://kyuman.art/event/exhibition/entry-335.html